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いつから男は旅立たなくなったのか - 「演歌・歌謡曲を応援する国会議員の会」問題Pt.2

「保育園落ちた」問題はまだまだ尾を引きそうな気配ですが、実はこれも「演歌・歌謡曲を応援する国会議員の会」の件と関連してくるんですよ。

www.huffingtonpost.jp

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これは演歌だけじゃなくて歌謡曲も含む話なんですが、<いつから男は旅立たなくなったのか問題>ってのがあってですねw

そう、かつて歌謡曲の世界では、男は愛する者を捨て、故郷を捨て、旅立つものだったんです。

ちょっと引用してみましょう。

あ、著作権が云々とか、許してね。

 

ありがとう ジェニー
お前はいい女だった
半端なワインより酔わせてくれたよ
だけど ジェニー あばよ ジェニー
俺は行かなくちゃいけないんだよ

沢田研二「サムライ」作詞 阿久悠

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ごめんよ どうやら別れの時間だ
ひと箱の煙草が 終わってしまった
男は心に ひびく汽笛に
嘘はつけない 行かせてくれよ

野口五郎「グッド・ラック」作詞 山川啓介

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あいつは俺には 過ぎた女さ
別れの気配を ちゃんと読んでて
上手に隠した 旅行鞄に
はずした指輪と 酒の小びんさ

(森進一「冬のリヴィエラ」作詞 松本隆

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間違った。

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もうこんな歌詞がわんさか出てくるんです。

 

対して女性はというと、港で待つものなんですね。
特に演歌ではその傾向が強い。

おんな港町
どうしてこんなに 夜明けが早いのさ
それじゃ さよならと
海猫みたいに 男がつぶやいた
別れ言葉が あまりにもはかなくて
忘れたいのに 忘れられない
せつない恋よ
おんな港町 別れの涙は
誰にもわからない

八代亜紀「おんな港町」作詞 二条冬詩夫)

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やがて汽車は 出てゆき
一人残る 私は
ちぎれるほど 手をふる
あなたの目を見ていた

ペドロ&カプリシャス「別れの朝」作詞 なかにし礼

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ちょっと脱線すると、阿久悠さんだけはちょっと変わってて、演歌でも女性が自分から動こうとするんです。

さよならあなた 私は帰ります
風の音が胸をゆする 泣けとばかりに
ああ津軽海峡・冬景色

石川さゆり津軽海峡・冬景色」作詞 阿久悠

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この時のさゆりさんはなんと19歳!

 

馬鹿な女と 云うように
京都から博多まで あなたを追って
西へ流れて行く女

藤圭子「京都から博多まで」作詞 阿久悠

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話を戻しましょう。では、どこからこんな感覚が生まれたのか。それはもっと調べてみないとわかりません。
でもね、冗談で「グッド・ラック」の歌詞を現代の朝の風景に重ねてみると、女性側からはこんな言葉が返ってくるんじゃないかと。

<いいから、カッコつけてないで、早く仕事に行ってこい!>

いやー、コントですねw

そう、これらの歌詞に、<男は外で働くもの、女は家を守るもの>という価値観が反映されているのは間違いないでしょう。実際、昭和の時代はそういうものでしたし、それを疑問に思う人も少なかったはずです。だから、旅立つ男の姿をカッコいいだの、男のロマンだなどといって正当化できたし、残される女について省みることもなかった。

 

つまり、「議員の会」の主張の裏には、やっぱりこういう価値観がまだあるってことなんですよ。安倍政権は<女性が活躍できる社会>だとか言葉ではそんなことを言うけれども、実際には有効な政策はほとんど打ち出さない。今回の保育園問題に関してのヤジだって、<女は家に居るもの>っていう価値観があるから、 あんなことが言えるんですね。

演歌・歌謡曲が好きってだけで、なんでそんなことが言えるのか。それは、ほとんどの人が語れるのは歌詞だけだからです。今でもそうです。音楽番組で音楽について触れたとき、司会者がサウンドの話をすることがありますか? <何について歌ったんですか?>っていう歌詞の話がほぼ100%です。もちろん、楽曲だったり雰囲気だったりが好きっていうのはあるでしょう。でも、具体的にどこが好き?って聞いたら、ちゃんと答えられるのは歌詞だけなんです。その歌詞の価値観が合わなかったら、そういった音楽を好きとは言わないだろうし、聴かないでしょう。

 

ちなみに、今は何度目かの<和モノ・ブーム>です。若い人たちの間でも歌謡曲ファンは増え、わざわざ政治家が音頭を取る必要がない程度には盛り上がっています。

昭和歌謡>という言葉に対してはアンチな僕ですが(なぜなら、歌謡曲は昭和の時代にしかないもので、歌謡曲そのものに昭和という意味が含まれていると思っているから。<昭和歌謡>という言葉を使う時は、後の時代になってから、歌謡曲のエッセンスを恣意的に取り入れる、昭和の雰囲気を作り出そうとしているということを指していると解釈しています)、その言葉が生まれたのは、90年代半ばに渋谷系がブームとなっている頃。例えば、デビューしたばかりのUAなどが歌謡曲へのリスペクトを表明したり、小沢健二ピチカート・ファイヴ筒美京平に作曲を依頼したり、ファンキーなGSや和田アキ子らが<グルーヴ歌謡>などと呼ばれ、DJプレイされるようになりました。

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いっこだけマニアックなの投下しておくわw

それ以降、ことあるごとに歌謡曲の再評価は繰り返され、今では研究もずいぶんと進みました。ただし、そのほとんどはサウンド面からの検証作業であり、ここに一般の歌謡曲ファンと音楽好きの歌謡曲ファンの間に価値観のズレを生んでいます。そのズレの断層に潜んでいるものこそが、昭和的な男尊女卑感だったりするんでしょうね。

 

ところで、<いつから男は旅立たなくなったのか>ですが、これにはわかりやすいヒントがあるんです。それは1986年。とあるCMから生まれたフレーズが流行語大賞の銅賞を受賞しました。それは「タンスにゴン」の「亭主元気で留守がいい」ってやつです。まだまだ男は旅立ちます。でも、それは自主的にじゃなくて、奥さんによって追い出されているんですねw 女性は強くなりました。

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そして今では、男も女も一緒にいる歌ばっかりです。誰かに依存していないとやっていけない、自立できない、そんな大人が増えているんでしょうか。その点は歌謡曲に学んだ方がいいのかもしれませんね。

 

あ、ぜんぜん関係ないんですけど、レイ・チャールズの61年のヒット曲に「旅立てジャック」(原題「Hit The Road Jack」)ってのがあるんですよ。これは男女の別れに際して、女が男に向かって「出て行って 二度と戻ってくるな」(Hit the road Jack and don’t you come back no more)と歌い、男は「出てってやるさ」と強がりつつも「そんなひどいことしないでくれよ」とだんだん弱気なっていく情けない男の歌なんですがwその邦題がなんで「旅立てジャック」って男側の気持ちを奮い立たせるようなものになっているのか。このへんにも<旅立つ男のロマン>的なものが自然に出てしまったのかもしれません。

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