1枚目 BOOWY「"GIGS" JUST A HERO TOUR 1986」(1986年)/ライヴ音源を大幅に加工し可能性を広げた名"ライヴアルバム"

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第1回目は、いろんな意味で日本の音楽史上の転換点になったBOOWYから。

BOOWYが日本の音楽シーンで成し遂げたことの中で最も大きなものは、歌謡曲に迎合しないロックをメジャーな地点に押し上げたことでしょう。あくまでも熱心なファンのものだったロックを表面化させたのは、まさにBOOWYがなし得た、もっとも大きな貢献だったはずです。

そのブレイク・ポイントは86年9月にリリースされたシングル「B・BLUE」でしたが、その曲を含むアルバム「BEAT EMOTION」(86年)がいささか刺激に欠ける出来だったことと、バンドの勢いがピークにあったのがこの作品が録音された「JUST A HERO TOUR」の時だったと思うので、こちらを採り上げます。個人的に初めて聴いたBOOWYのアルバムでもあります。

「GIGS」はBOOWYの通算5枚目となるアルバム。BOX入り、限定10万枚という豪華な仕様で発売されましたが、即完売。長い間プレミアムがついていましたが、今は多少落ち着いています。

ライヴ・アルバムでありながら大幅に差し替えやオーバーダビングを施し、ライヴの時には入っていなかったキーボードまで入っているという、この当時は禁じ手とも言える作りだったのですが、それを公言することによって、ライヴアルバムの可能性を広げることに成功しました。この先駆的な例としては、RCサクセション「ラプソディー」(1980年)がありますが、こちらはライヴアルバムでありながら、新曲のオリジナルアルバムという立ち位置であり、当時は音源を加工していることは公表されていなかったはずです。それを踏まえると、ライヴ加工作品をたくさん出しているフランク・ザッパに着想を得たのかもしれません。

また、「Image Down」での氷室のあまりにも有名なMC「ライヴハウス武道館へようこそ!」に象徴されるように、"武道館ライヴ"の印象が強いのですが、実際には「JUST A HERO TOUR」の様々な公演からの録音を編集したもの。こうして完成度を追求した"ライヴ・アルバム"を作ったことにより、ロックの魅力はライヴにあり、という印象を広めたのも功績に挙げてもいいかもしれません。また、タイトルに使われた”GIG”と言う言葉が広まったのも、このアルバムの影響でしょう。

2012年には「"GIGS" JUST A HERO TOUR 1986 NAKED」なる、未編集の武道館公演の音源もリリースされました。2005年に前述したRCサクセション「ラプソディー」の完全版(正確には、オーバーダビングや差し替えなしのリアルなライヴ音源)がリリースされましたが、これに刺激された一面があるのかもしれません。


【収録曲】
A1 PROLOGUE
A2 BAD FEELING
A3 ROUGE OF GRAY
A4 BLUE VACATION
A5 JUSTY
A6 BABY ACTION
A7 ホンキー・トンキー・クレイジー

B1 わがままジュリエット
B2 DREAMIN'
B3 IMAGE DOWN
B4 NO.NEW YORK
B5 JUST A HERO


(noteに掲載していたものを加筆修正して転載しています)

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