2枚目 DEAD END「GHOST OF ROMANCE」(1987年)/魑魅魍魎とデミニッシュが蠢く異形のロックンロール

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80年代後半はジャパメタが一世を風靡した時代で、王道から異端まで様々なバンドが存在しました。中でもDEAD ENDは一際特異な存在で、いわゆるメタルとは違った楽曲構造を持ち、魑魅魍魎だ妖怪変化だと歌う歌詞はまるでホラー映画といった感じで、現在だったら"共感を得られない"の一言で却下されてしまいそうなほど、際だった独自性を持っていました。バラバラな個性を持った4人のメンバーが奇跡的に合致した瞬間。きっと時代が後押ししたんだと思います。

ヴォーカルのMORRIEは外語大学のスペイン語学科を卒業。実際、外国人の女性に凄くモテたらしい(奥さんはドイツ人)。特異な歌い方は、GASTUNKBAKIからの影響が大きいとのこと。

元ラジャスとしてメジャー経験があったベーシスト、CRAZY "COOL" JOE(D'ERLANGERのCIPHERには「クールさん」と呼ばれていたらしいw)は、ベースこそ存在感は派手にという考えの持ち主で、モット・ザ・フープルなどのロックンロールを愛好していました。

YOUは大阪では有名な実力派ギタリストで、バンド加入時のテラ・ローザとの引き抜き合戦のエピソードは有名。マイケル・シェンカー、そして、ウルリッヒ・ロートを溺愛し、デミニッシュを多用したフレーズと大きなビブラートで、その個性は抜きん出ていました。

ドラムのMINATOはメジャーデビュー時に加入。地元の札幌ではサーベルタイガーなどで活躍し、実力派としてかなり名の知れた存在で、加入が決まったものの、実はあまり乗り気ではなかったことも当時から知られていました。

メジャーデビュー作となるこの2ndアルバムは、YOUの音楽センスとMORRIEの世界観がうまく合致し、複雑な曲構成と変態的なコード進行、アレンジも変化に富んでいて、それでいてキャッチーなメロディが乗るという、今聴いてもほかに比べるものがない個性的な作品に仕上がっています。特に「The Damned Thing」のあまりにも個性的なリフとソロの音使いは、ギタリストなら一聴の価値ありです。

ただし、ライヴの演奏は危なっかしいことも多く、あの演奏の好き勝手感といったら、固定メンバーのバンドとは思えないほど。その原因は恐らくメンバーのリズム感覚の違いだと思われます。前ノリのクール・ジョー、後ノリのYOUの間にジャストなタイム感のMINATOがいたから、なんとかなっていたのかなとも思いますが。まぁ、音楽の趣味があまりにも違いますから仕方ないのかも。自分を曲げられない人たちだったんですね。

アナログ盤は8曲収録で、初回盤は「Grave Of The Shadow」を収録したソノシート付き。CDは「Decoy」を追加した9曲入り。現行CDは10曲全部が入っています。アメリカでも発売され、アメリカ盤のアナログ盤が存在しています。

他の人とは違うことをやるのが当たり前で、それをメジャーで追求するのが許された時代。(お金の面はともかく)ロックバンドにとってはいい季節でした。


【収録曲】
1. DANSE MACABRE
2. THE DAMNED THING
3. PHANTOM NATION
4. THE GODSEND
5. DECOY (CD Only)
6. THE RED MOON CALLS INSANITY
7. DEAD MAN’S ROCK
8. SKELETON CIRCUS
9. SONG OF A LUNATIC
10. GRAVE OF THE SHADOW (Bonus Track)

(noteに掲載していたものを加筆修正して転載しています)

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