渋谷系とは何か〜図らずもその深層に迫ってしまったFBでのやりとり

Facebookに書いた記事なんですが、ソウル系の某大御所評論家さんからブログにしといた方がいいよといわれたので、移植しておきます。
Facebookにはいろいろ書いてるけど、ブログはどうもおろそかになってしまうなぁ。

問題になったのはこの記事。
それに対し、僕が書いたことと、いただいたコメント、それに対しての返信を引用します。
そのへんをよく知る関係者の方や渋谷という街をベースに音楽活動してきた方など、当事者の方々がコメントしてくださっていますので、いろいろ参考になるかと。
ちなみに、僕自身も渋谷系の頃は渋谷のCDショップで働いていましたので、そのへんの空気は肌でわかっているつもりです。

そういえば、いつだったかラヴ・タンバリンズのEllieさんが渋谷系ってなんなの?みたいなこと言ってたときの、僕との長〜いやりとりがFBに残ってるはずなので、それもひっぱりだせれば面白いかも。
でも、FBって過去ログの検索が面倒なんだよなぁ。

 

funmee.jp

ジョーに納得いかないセレクション。
いまになって、渋谷系を勝手に再定義したような感じ。

渋谷系」という言葉が生まれたのは1993年だから、それ以前の作品は厳密には「プレ渋谷系」とでも呼ぶべきもの。
フリッパーズを入れてしまうと、まるで渋谷系がバンドブームと同時期に存在したかのように錯覚させてしまう。

また、渋谷系の代名詞であり、渋谷系をもっとも意識的に体現していたピチカート・ファイヴが選ばれていないのは意味不明。
逆に、本人たちのあずかり知らぬところで渋谷系の代表格に祭り上げられていたラヴ・タンバリンズが選ばれていないのもおかしい。

渋谷系とは関係ないヴィーナス・ペーターやなぜか洋楽のベン・フォールズ・ファイヴ(彼らが渋谷系と呼ばれたことはこれが初めてのはず)、渋谷系の次の流れを作り出したサニーデイ・サービスまでが入っている。
これじゃ、「渋谷系」ってものが余計わかりにくくなるわ。
これだったらはっぴぃえんども渋谷系でいいんじゃない?

こうやって歴史は捏造されていくのだよ。

 

Andy Shiono これを書かれた方がおいくつかは分かりませんが、当時は店頭には立たれていなかったのでは?
コーネリアスの1stのリリースは1994年です。^^;

 

池上 尚志 これを書かれた方は編集者〜タワレコBounce編集部などを歴任されているようなので、そのくらいしっかり調べなさいと言いたいですね。読者は肩書きで信じちゃいますから。

 

Makoto Sugishita なんでBF5が渋谷系?はじめて聞いた(笑)

 

池上 尚志 だしょん。

 

Makoto Sugishita 自分の渋谷系の定義も怪しいとは思うが、違うのはわかるよね(笑)

 

池上 尚志 渋谷系って再発見と編集の文化なんですよ。だから、同時代の新感覚バンドが入ってくるわけないんです。

 

Yoko Matsuda『そのセンスは、Suchmosをはじめとするシティポップ勢と通じる部分が多少あるかもしれません。』 その書き方、ずっとオリジナルラブファンの私からしたら、ちょっとイラッとするんですけど。

 

池上 尚志 サチモスがシティポップだというのは表層的な部分で本質は全く違う。それを断定してしまうのはおかしいし、シティポップと渋谷系って関係ないし。

 

Yoko Matsuda だいたいねー、オリジナルラブ渋谷系に括られるかもしれないけど、田島さん自体、ライブで叫んでんじゃん?『俺は渋谷系じゃねー!』って。ぷんぷん。

 

池上 尚志 それ、有名w
まぁ、本人の思惑に関わらずにカテゴライズされちゃうもんなんだけどね。

 

よしなり ひでお 業界はコネ入社が当たり前だから、時々こういう「わかってない人」がいます・・・

 

池上 尚志 バウンスも落ちたなーって思いますね…

渋谷系の後に某歌姫を発掘〜デビューさせた元プロデューサーさんです

 

和久井 光司 ひどいね。渋谷にレコード屋が30軒ぐらいあった時代を知らないんだろうけど、音楽じゃない文化をたどっていくと、当時の渋谷の曖昧な雰囲気が、新宿や下北とは圧倒的に違っていたことがわかるはずだよね。音楽で括ると実態から遠くなっちゃうんだよ。「音楽ならちょっと知ってます」って程度のヤツに、文章なんか書かせちゃダメだろ。池上、書けよー w 人がいて、街があって、そこにどんな空気が流れていたか、が文化のキモなんだからさ。西武が仕掛けたこととか、それこそPop Indsとかみたいな「下地」を知らないと、ホントは書けないネタだよねー。

 

池上 尚志 そうなんです。渋谷系ってジャンルじゃなくて<空気感>なんです。そのキーワードが、上にも書きましたが、再発見と編集感覚。古い音楽を再発見して、そこに今の感覚を加えて再編集したもの。それをまとめているのが渋谷という街に集う人たちに共通するある種のセンスなんです。だから、リアルタイムでも模倣した渋谷系は空気感がぜんぜん違ったからすぐに分かった。
そういう曖昧なものだから、これまでに何度も渋谷系リバイバルが叫ばれながらも形になっていないし、渋谷系の本にも核心を突いたものがないんだと思います。

 

和久井 光司 そうだね。スクリーンの事務所も81年から渋谷桜ヶ丘にあって、当時はミュージック・マガジンも、ロッキング・オンも、ミュージック・ステディも、みんな桜ヶ丘にあった。で、俺は宮益坂下のキティでも仕事するようになって...。それが80年代の始まり。70年代の渋谷は、天井桟敷東京キッドブラザーズで始まったんだよ。文化屋雑貨店とか、そういう流れを受けたセンスだったんだけどねー。渋谷自体を知らないと、渋谷系のことなんか書けないだろ。自分がどれだけ無知か、常に反省してるような人間じゃないと、もの書きなんかやっちゃダメだよね。

 

池上 尚志 牧村憲一さんの「渋谷音楽図鑑」はまさにそういう本ですね。ご本人は渋谷系の本ではないといっていましたが、渋谷系とは音楽そのものの名前ではないということからいえば、渋谷という街を音楽を中心に語ったこの本こそがまさに渋谷系の核心なのかもしれないと思います。

 

和久井 光司 牧村さんとかは、ちゃんと見てきた人だからね。言葉もうまく使い分けてると思う。

 

池上 尚志 ちなみに、ラヴ・タンバリンズのEllieさんは、そのど真ん中にいながら渋谷系というものが何かを全くわかってなかったし(本人はUS R&Bの人だし)、フリッパーズギター渋谷系じゃないのは(たしか本人たちも否定している)のは、渋谷系の構造がフリッパーズの「世界塔」の構造そのものだからです。いろんなものを飲み込んで作り変えながら膨張していくという、本人たちにとっては結果
(しかも失敗してる)でしかないことをジャンルだといわれても理解できるわけないんです。

 

和久井 光司 当時は編集者もライターも、「なんだろね、渋谷系って?」って言ってたんだけど、雰囲気で使うと便利な言葉だったんだよね。ZESTとかでギター・ポップ買ってるような連中が好むJポップのことだったのかもしれないけど、黒沢兄弟みたいなポップ職人までそこに入れちゃうとどうなの?みたいになっていった記憶がある。だから、あとから言われてることのほとんどは捏造だよ。マキちゃんが渋谷系を唄ってるのは、シャレなのにね。

 

池上 尚志 そうそう、あの野宮さんのキッチュな借り物感をマジに捉えるととんでもない誤解が起こります。

 

和久井 光司 彼女は凄いシンガーなんだよ、日本にはいなかったタイプの、キッチュなポップ・シンガー。本人も「実体」を求めてはいないんじゃないかな。あ、実体がフワフワしてるのか ww ステキな人だよね。

 

池上 尚志 まだ会ったことないんですよ〜。

 

和久井 光司 うそ〜、ポータブル・ロックは観なきゃダメよん。

※80年代初頭から活動を続けるミュージシャンで音楽評論家さんです

 

池上 尚志 いちおう、この筆者の意図を代弁すると、今の感覚で渋谷系を捉えるとこうなるってことだと思うんだけど、実態のないものに今の感覚を加えると別物になってしまうということがわかってないんですね。
当時、シティポップなるものは、渋谷系のクリエイターの人たちの経験の中に内在していたけど、表面化していなかった。これを読み誤ると大変なことになる。

 

Andy Shiono 池上さんが書かれているように「渋谷系」は海外のレア・グルーヴ・ムーブメントから既存の評論家には相手にされなかったような音楽の再発見とそれを自分たちの新しい価値観でエディットし小規模なクラブイベントなどでプレイするといった流れから始まっていたのではないかと思います。(その過程で「Suburbia suite」や「POP IND'S」最終号の「小西、高浪が選ぶ200枚」といったカタログ的なものも出来るわけですが。)

個人的にはあくまで「リスナー主体」のムーブメント(インターネット普及前の最後のカタログ文化)で彼らの感性に近く共感できるバンドが「ピチカート」や「ラヴ・タンバリンズ」「オリジナル・ラヴ」などであったのだと認識しております。
 

池上 尚志 リスナー主体の、ってところは重要ですよね。
ただ、ラブ・タンバリンズだけはちょっと特殊なケースだと思っていて、日本で初めてのクラブオリエンテッドなソウルバンドだったんだと思うんですよ。
ソウル系の上手い人たちっていくらでもいたんだけど、クラブ界隈の人たちとは感性が違った。だから、Ellieさんのヴォーカルに驚いたわけです。バンドはドヘタだったけどw 要するに、自分たちの文化から出てきた初の本格的なシンガー。だから、渋谷系の代表格なんですね。
Ellieさんからすれば巻き込まれてしまっただけなんだけどw

 

Andy Shiono 池上さんが以前インタビューされたEllieさんの記事を改めて読んでみましたが、色々考えさせられました。

ラヴタンバリンズは以前何度か見ましたが、ヴォーカリストとバンドの力量差が違いすぎるという点でジャニス・ジョプリンとビッグ・ホールディング・カンパニーみたいだなとは感じていました。(笑)(自分の理想に演奏能力がなかなか伴わないというのも渋谷系のバンドには結構ありましたね。)
アーティストに一般人のような常識を求めるようになってしまった昨今ではEllieさんのようなタイプのヴォーカリストが活動するのは中々大変だとは思いますが、頑張って欲しいですね。
 

池上 尚志 いまのEllieさん、すごいですよ。歌もすごいし、アドリブのラガマフィンとかやっちゃうし、パンツも脱いじゃうw

 

Andy Shiono お〜、見てみたいですね。^ ^


Fukada Dochio リアルタイムを知る世代としては確かに違和感しかないセレクションw
そもそも、渋谷系、クラブ系はDJから始まったもので、バンドはノルマのあったライブハウスよりDJ集客のあったクラブに出るようになり、DJから色々なレアグルーヴものを教えてもらったりして音楽を作って行った感ありますな。渋谷系、クラブ系を作り上げたのはDJすな。

 

池上 尚志 そうだ。ドッチーさんて元渋谷系の人じゃないすか!w

 

Fukada Dochio 元ヤンみたいな響きw

 

池上 尚志 元チーマーだったりしてw

 

Fukada Dochio チーマーってww
いたなぁw

※元渋谷系の某バンドのドラマーさんです