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【リポート】岩里祐穂 presents Ms.リリシスト トークセッション Vol.1 ゲスト:高橋久美子

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8月27日に行われた、岩里祐穂さんのトークイベントに行ってきた。

近年は裏方の作家さんが前に出てきて、作家しばりのコンピレーションなんかもいろいろ出るようになってきたけど、その本人が中心になってイベントをやることってあまりない。そういう意味で、これからの作家の在り方みたいな部分も含めて興味深く見に行った。

なんつーか、岩里節全開。人前で喋るのは初めてと言っていたけど、絶対に向いてると思う。普通なかなかあんなに自由に喋れないもん。あれは性格だなー。明るいし美人だし、テレビに出ても人気出そう。

で、その(名目上の)第1回目のゲストは、元チャットモンチーのドラマーで、いまは作家、作詞家として活動している高橋久美子さん。2人の馴れ初めはももクロのライヴで隣合わせの席になったことで、チャットモンチーのファンだった岩里さんから声をかけたそうだ。

<お互いの曲を褒め殺し合うコーナー>として、お互いで相手の書いた詞を選んで質問をぶつけていくコーナーがあったんだけど、これが面白かった。

高橋さんが選んだ岩里さんの曲は、ももクロサラバ、愛しき悲しみたちよ」と「創聖のアクエリオン」。
岩里さんの言葉選びって、今井美樹さんの自立した大人の女性のイメージが強いけど、実は無邪気さというか、少女性がその本質にあるように思う。少女マンガ的な突飛なロマンティシズムの使い方がとても上手いのだ。

例えば、「サラバ〜」だったら、<言っちゃえば”い〜じゃん”>とか<言いたいよ”VS”言えない>、<聞かざるで”ござる”>、のような崩した口語体、記号的な言葉使い、キャラクター的な言い回しなど、例え歌うのが10代の少女だとわかっていても、普通はなかなか使えないもの。「アクエリオン」の前半部の格調高い言葉使いや、あまりにも有名なサビの<一万年と二千年前から愛してる>という飛び道具的なフレーズ、どちらも普通なら躊躇しますって。アニソンの時代にガッツリ乗っかれたことや、トリッキーな音使いをする菅野よう子の楽曲に見事に世界観を合わせられるのは、こういった性質が影響しているんじゃないかと思う。

そういえば、以前インタビューしたとき、初めて堀ちえみさんに歌詞を書いた時(「さよならの物語」の前のボツったもの)、文字の間とかにイラストを描いたりして、担当さん(今は亡き、あの渡辺有三さん!)に面白い子だね〜なんて言われたというようなことをおっしゃっていた。そのイラストが今は言葉選びの感性に姿を変えて現れているのではないかという気がする。
また、大人っぽい歌詞を書くときは、少女性が大人に憑依したような、なりきった感がある。だから、ヒリヒリするような現実的な歌詞よりも、ロマンティシズムが前に出てくるんだと思う。

対して、高橋久美子さんは、学生時代から歌詞(というか詩)を書き続けてきたらしく、チャットモンチーのときもほとんどが詞先だったとのこと。今も歌にしない普通の詩や小説なども書いているとのこと。

興味深かったのが、やはりももクロに提供した「空のカーテン」の詞で、岩里さんが指摘していた、”朝のニュース見て扉開けて歩き出して教室の前に行くまでにたった2行”というスピード感。そして、僕が気になったのは、場面が”移動”していること。例えば、歌謡曲の場合はあまり移動しないんですよ。いまの一瞬に思ったことを3分に膨らませて1曲にするのが当たり前だったりするから。もう1つ岩里さんが指摘していたのが、冬の歌だってわかってるのに、歌詞の最後で<冬が来た>歌うのはなぜかということ。高橋さんはこれを”改めて噛み締めたかったから”と言っていた。で、僕があれっ?と思ったのは、歌の世界では季節って感情を代弁するものだったはずなのに、”冬であることをかみしめている”、つまり、主人公の感情と冬であることが実は同等のものだったということ。”主人公がいて季節は冬”なんじゃなくて、”冬のシーンの中に主人公がいる”という構図の歌だったんだなと。こういう構造の変化って、なかなか言葉で説明するのは難しいんだけど、曲として聴いた時の感覚としてはずいぶんと違って伝わるもの。だから、若い子たちにはこれが当たり前なのかもしれないけど、 僕のようなオッサンには違和感があるし、それが新鮮だったりする。この日の岩里さんの名言の1つに「新しいものは違和感の中からしか生まれない」というのがあったが、ほんとその通りだなと思った。

もう1つ、歌詞とそれ以外の小説やメロディの制約がない詩を書くときってずいぶん感覚が違うはずなのだが(僕自身ライターとして文章を書くが、じゃあ歌詞も書けるよね、じゃあ小説を書けばいいじゃんなんてよく言われるが、そう簡単にはいかない)その時間軸ってどうなっているんだろうと思った。ある程度の長さが必要な小説には時間軸上の移動が必要だし、しかし、高橋さんの歌詞は同様に”移動する”ことによって時間の変化が起きる。これをまったく長さが違う文章の中にどうやって収めていくのかということ。この後に客席からの質問コーナーというのもあったが、僕が質問して一般の人の機会を奪うのはよくないので、 あとでご挨拶したときにこっそり質問しようと思っていたのだが(これを職権濫用というw)、タイミングが悪く聞きそびれてしまった。答えはたぶん気にしていない、か、そんなこと考えていない、だという気がするが・・・(こういう質問はだいたい考えすぎですよって言われる)。

その他、<自分たちの歌詞が生まれる場所コーナー>と題した、自分たちの作業場の写真の公開や、高橋さんによる詩の朗読(SCANDALに提供した歌詞のほかに、サプライズで、岩里さんの35周年を記念して森尾由美に提供した「そうしましょうね」も朗読した)や岩里さんが歌詞を書いた坂本麗衣さんが1曲パフォーマンスしたりと、あっという間の2時間半だった。トークそのものもおもしろかったが、客席からは作詞を勉強しているという人からの質問も飛んだ。作詞する人にはいろいろ参考になるような話 がいっぱいあったと思う。

最後には、10月に岩里さんがいわさきゆうこ名義でリリースした唯一のアルバムが初CD化されるとの告知も。実はこれ、僕がCD化したほうがいいですよ! と岩里さんに推したら、最初はいやいやあんなもの的なことを言っていたのに、その気になってw実現したというもの。いや、これマジでいいアルバムなのでおすすめです。金澤寿和さんの<Light Mellow>シリーズからのリリースです。

Vol.1と銘打っているものの次回の予定は未定みたいな話だったが、ゲストの具体的な名前も上がっていたので(決定事項ではないようなので、ここでは書かないでおきます)非常に楽しみ。だって、インタビューのときに、僕が2000年代以降をするりと抜け出した作詞家として岩里さんと共に名前を挙げた人だったんだもん!岩里さんと年も一緒だったはず。
あと、個人的には及川眠子さんをゲストに呼んでほしい。
アクエリオン VS エヴァ!!(といいつつ、どっちも見てないw)
あと、川村真澄さん。こちらも年が一緒だったはず。

そんなわけで、いろいろ楽しみにしております。